配偶者居住権の登記と対抗要件(民法1031条)

配偶者居住権は、相続によって取得しただけでは第三者に対抗できるとは限らず、登記が対抗要件として重要になります。ここでは、配偶者居住権の登記等を定める民法1031条の内容を、条文の事実に沿って中立に整理します。配偶者居住権そのものの成立・評価・存続期間については 配偶者居住権の評価と存続期間(1028条〜) も参照してください。

前提:配偶者居住権は、平成30年(2018年)の民法(相続関係)改正で創設され、2020年(令和2年)4月1日に施行された制度です。被相続人の配偶者が、相続開始時に被相続人の財産に属した建物に居住していた場合に、遺産分割や遺贈などによって取得しうる、その建物の全部を無償で使用・収益できる権利です(民法1028条1項)。

所有者は登記を備えさせる義務を負う(民法1031条1項)

民法1031条1項は、「居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う」と定めています。配偶者居住権の対抗要件は登記に限られることから、配偶者には居住建物の所有者に対する登記請求権が認められると説明されています。

登記して初めて第三者に対抗できる(同2項・605条準用)

民法1031条2項は、「第605条の規定は配偶者居住権について、第605条の4の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する」と定めています。前段の605条準用により、配偶者は配偶者居住権について登記したときに、その不動産について物権を取得した者などの第三者に対抗することができます。

準用される条文準用により配偶者居住権に与えられる効果
民法605条登記をしたときは、配偶者居住権を第三者に対抗できる(対抗力)
民法605条の4登記を備えた場合、占有を妨害する第三者への妨害停止請求・占有する第三者への返還請求ができる

賃貸借との違い:引渡し(占有)は対抗要件にならない

建物の賃貸借では、登記がなくても建物の引渡しがあれば第三者に対抗できるとされています(借地借家法31条)。これに対し、配偶者居住権では、居住建物の占有(引渡し)は第三者に対する対抗要件とはされておらず、対抗要件は登記のみとされています。条文の整理としては、住み続けているという事実だけでなく、登記の有無が対抗の場面で意味を持つ点が特徴です。

条文のポイント:①所有者は配偶者に登記を備えさせる義務を負う(1031条1項)/②登記をすれば第三者に対抗できる(同2項・605条準用)/③登記を備えれば妨害停止・返還の請求ができる(同2項・605条の4準用)。配偶者居住権では引渡し(占有)は対抗要件とされていません。

第三者への対抗が問題になる場面の例

たとえば、居住建物の所有権が所有者から第三者に譲渡された場合や、建物に設定された担保権の実行などによって所有者が変わった場合に、配偶者が新たな所有者(第三者)に対して配偶者居住権を主張できるかが問題となります。一般的な説明としては、配偶者居住権の登記を備えていればこうした第三者にも対抗できる一方、登記がない場合は対抗できないおそれがあるとされます。個別の事案でどうなるかは具体的な事情によって異なります。

妨害停止・返還の請求(同2項・605条の4準用)

民法1031条2項が準用する605条の4により、配偶者は、配偶者居住権の設定の登記を備えたときは、(ア)居住建物の占有を第三者が妨害しているときはその第三者に対する妨害の停止の請求を、(イ)居住建物を第三者が占有しているときはその第三者に対する返還の請求をすることができるとされています。

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よくある質問

配偶者居住権は登記しないと第三者に対抗できませんか?

民法1031条2項は不動産賃貸借の対抗力に関する605条を配偶者居住権に準用しています。これにより、配偶者は配偶者居住権について登記をしたときに第三者に対抗できます。賃貸借と異なり、建物の引渡し(占有)は配偶者居住権の対抗要件とはされていません。

登記は誰がしてくれるのですか?

民法1031条1項は、居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負うと定めています。対抗要件は登記に限られることから、配偶者には所有者に対する登記請求権が認められると説明されています。

建物が第三者に売られたら住み続けられなくなりますか?

一般論として、配偶者居住権の登記を備えていれば、その後に建物の所有権を取得した第三者に対しても対抗できると説明されます。登記を備えていない場合は対抗できないおそれがあります。個別の事案の結論は具体的な事情により異なるため、専門家にご確認ください。

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