配偶者居住権の相続税評価と敷地利用権の計算方法

配偶者居住権(民法1028条)を取得すると、その権利は財産的価値をもつものとして相続税の課税対象になります。このとき、配偶者居住権・居住建物・敷地利用権・居住建物の敷地の用に供される土地の4つに価額を割り振る評価方法が、相続税法23条の2に定められています。ここでは、国税庁が示す算式(タックスアンサーNo.4666)に沿って、評価の考え方と計算要素を中立に整理します。

評価する4つの財産(相続税法23条の2)

配偶者居住権が設定された自宅については、建物と土地のそれぞれが「配偶者の権利部分」と「所有者の負担付き所有権部分」に分けて評価されます。相続税法23条の2は、次の4つの価額の評価方法を定めています。

財産取得する人のイメージ
配偶者居住権配偶者(建物に住み続ける権利の部分)
居住建物(の所有権)所有者(配偶者居住権の負担が付いた建物所有権)
敷地利用権配偶者(配偶者居住権に基づき敷地を使用する権利)
居住建物の敷地の用に供される土地所有者(敷地利用権の負担が付いた土地所有権)

計算に使う主な要素

国税庁の算式では、次の要素を用いるとされています。

要素考え方(国税庁の整理)
耐用年数建物の構造に応じた住宅用の法定耐用年数を1.5倍したもの(減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める住宅用の耐用年数を1.5倍)
経過年数建物の新築時から配偶者居住権が設定された時までの年数
存続年数配偶者居住権の存続期間に対応する年数。終身の場合は、配偶者の平均余命(厚生労働省の完全生命表に基づく年齢・性別ごとの平均余命)を用いるとされる
複利現価率存続年数に応じた法定利率による複利現価率。法定利率は民法404条により定まり、配偶者居住権が設定された時点の法定利率を用いるとされる

配偶者居住権・建物の評価の考え方

配偶者居住権の価額は、居住建物の相続税評価額から、所有者に残る部分(負担付き所有権)を差し引いた額として求められます。国税庁の算式では、おおむね次の関係として説明されています。

配偶者居住権の価額 = 居住建物の相続税評価額 −〔居住建物の相続税評価額 ×(耐用年数 − 経過年数 − 存続年数)÷(耐用年数 − 経過年数)× 存続年数に応じた法定利率による複利現価率〕

居住建物(所有権)の価額 = 居住建物の相続税評価額 − 配偶者居住権の価額

分子が負になる場合(存続年数が長く耐用年数を超えるような場合)など、端数や個別の取扱いは国税庁の算式・通達に従います。

敷地利用権・土地の評価の考え方

敷地利用権の価額は、土地の相続税評価額から、その額に存続年数に応じた複利現価率を乗じた額(=将来の所有権部分の現在価値)を差し引いて求めるとされています。

敷地利用権の価額 = 土地の相続税評価額 −〔土地の相続税評価額 × 存続年数に応じた法定利率による複利現価率〕

土地(所有権)の価額 = 土地の相続税評価額 − 敷地利用権の価額

国税庁の計算例

国税庁タックスアンサー(No.4666)では、次の前提による計算例が示されています(数値は同例によります)。

前提
居住建物の相続税評価額2,000万円
土地(敷地)の相続税評価額5,000万円
耐用年数33年(住宅用22年 × 1.5)
経過年数10年
存続年数12年(平均余命に基づく)
複利現価率0.701

この例での計算結果は次のとおりとされています。

区分価額
配偶者居住権の価額13,294,783円
居住建物(所有権)の価額6,705,217円
敷地利用権の価額14,950,000円
土地(所有権)の価額35,050,000円

このように、建物・土地のそれぞれが「配偶者の権利部分」と「所有者の部分」に分けて評価され、合計はもとの評価額(建物2,000万円・土地5,000万円)と一致します。実際の評価は、構造・築年数・配偶者の年齢・存続期間の定め方などにより変わります。

遺産分割での評価との関係

上記はあくまで相続税の計算のための評価です。遺産分割の場面での評価は、当事者の合意や別の評価手法によることがあり、相続税評価額と必ずしも一致しません。どの評価を用いるかは場面によって異なります。

家族構成を入れて法定相続分を自動計算する

誰が相続人にあたるかや各人の法定相続分は、家族構成を入力するとその場で自動計算・可視化できます(登録不要・無料)。配偶者居住権を検討する前提となる相続分の把握に役立ちます。

▶ 法定相続分を自動計算する

よくある質問

配偶者居住権の相続税評価の根拠はどの法律ですか?

配偶者居住権・居住建物・敷地利用権・居住建物の敷地の用に供される土地の評価方法は、相続税法23条の2に定められています。具体的な算式は国税庁のタックスアンサー(No.4666 配偶者居住権等の評価)で示されています。

敷地利用権はどのように評価しますか?

敷地利用権の価額は、土地の相続税評価額から、その評価額に存続年数に応じた法定利率による複利現価率を乗じた額を差し引いて求めるとされています(相続税法23条の2、国税庁No.4666)。存続年数や法定利率は所定の方法で定まります。

存続年数や法定利率はどう決まりますか?

存続年数は、終身を前提とする場合は配偶者の平均余命(厚生労働省の完全生命表に基づく年齢・性別ごとの平均余命)を用い、期間を定める場合はその年数によるとされています。法定利率は民法404条により定まり、配偶者居住権が設定された時点の法定利率を用いるとされます。

他の相続パターン