配偶者短期居住権(民法1037条)の内容は、それ自体を定める条文だけでなく、民法1041条による「準用」を通じて補われています。民法1041条は「使用貸借等の規定の準用」という見出しのもと、いくつかの条文を配偶者短期居住権について準用すると定めており、譲渡の可否や修繕、費用の負担、建物が滅失した場合の扱いなどが、これらの準用条文によって規律されます。ここでは条文の内容を中立に整理します。
民法1041条は、次の各条文の規定を配偶者短期居住権について準用すると定めています(条文上の文言)。
| 準用される条文 | 条文上の内容(要旨) |
|---|---|
| 民法597条3項 | 使用貸借は、借主の死亡によって終了する旨を定める規定 |
| 民法600条 | 契約の本旨に反する使用収益による損害の賠償・借主が支出した費用の償還の請求は、貸主が返還を受けた時から1年以内にしなければならない等の期間の制限 |
| 民法616条の2 | 建物(賃借物)の全部が滅失その他の事由により使用収益できなくなった場合に、これによって終了する旨の規定 |
| 民法1032条2項 | 配偶者居住権について「譲渡することができない」と定める規定(譲渡禁止) |
| 民法1033条 | 居住建物の修繕等に関する規定(配偶者が必要な修繕をできること、所有者による修繕等) |
| 民法1034条 | 居住建物の費用の負担に関する規定(通常の必要費は配偶者が負担する等) |
これらの準用により、配偶者短期居住権は、終身を原則とする配偶者居住権(民法1028条以下)と類似の規律を一部共有しつつ、短期の居住保護にふさわしい範囲で使用貸借・賃貸借の規定を取り込んでいます。
民法1032条2項は「配偶者居住権は、譲渡することができない。」と定めています。この規定が民法1041条により配偶者短期居住権にも準用されるため、配偶者短期居住権も第三者へ譲渡することはできないと整理されます。残された配偶者本人の居住を保護するための一身専属的な性格に対応した規律です。
修繕については、準用される民法1033条1項により、配偶者は居住建物の使用収益に必要な修繕をすることができます。配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、所有者がその修繕をすることができます(同条2項)。
費用については、準用される民法1034条1項により、配偶者が居住建物の通常の必要費を負担します。通常の必要費以外の費用については、同条2項により民法583条2項の規定が準用されます。
| 項目 | 条文上の整理 |
|---|---|
| 必要な修繕 | 配偶者が行うことができる(1033条1項の準用) |
| 配偶者が修繕しない場合 | 所有者が修繕できる(1033条2項の準用) |
| 通常の必要費 | 配偶者が負担する(1034条1項の準用) |
| 通常の必要費以外の費用 | 民法583条2項の規定を準用(1034条2項) |
居住建物の全部が滅失その他の事由により使用収益できなくなった場合には、民法616条の2の準用により、配偶者短期居住権はこれによって終了すると整理されます。
また、契約の本旨に反する使用収益によって生じた損害の賠償や、配偶者が支出した費用の償還については、準用される民法600条により、貸主(居住建物取得者)が建物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならないなどの期間の制限がかかります。
配偶者短期居住権が消滅したときの居住建物の返還については、民法1040条が別途定めており、配偶者は原則として居住建物を返還しなければなりません(同条1項)。返還にあたっての取扱いも条文に沿って整理されます。民法1041条の準用条文は、こうした返還の場面で生じる費用償還や損害賠償の期間制限(600条)などを補う形で機能します。具体的な該当性は事案により異なります。
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民法1041条により準用される民法1034条1項は、配偶者が居住建物の通常の必要費を負担すると定めています。通常の必要費以外の費用については、同条2項により民法583条2項の規定が準用されます。具体的な負担の範囲は事案により異なります。