遺贈とは、遺言によって財産を他人に無償で与える処分をいいます。遺贈には、与え方の名義によって「包括遺贈」と「特定遺贈」の区別があります。ここでは、両者の区別と包括受遺者の地位に関する民法の条文の内容を、事実のとおり中立に整理します。
民法第964条は、「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」と定めています。すなわち遺言者は、財産を「割合(包括)」の形で与えることも、「特定の財産」を指定して与えることもでき、その対象は財産の全部であっても一部であってもよいものとされています。この条文が、包括遺贈と特定遺贈という2つの名義(与え方)の根拠となっています。
民法第990条は、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と定めています。包括遺贈とは、遺産の全部、または「遺産の3分の1」のように一定の割合を与える遺贈です。割合で財産を受ける包括受遺者は、その割合に応じてプラスの財産だけでなくマイナスの財産(債務)も承継し、相続人と同じように遺産分割協議に参加するなど、相続人と同一の権利義務を有するものとされています。これに対して特定遺贈は、「この土地を与える」のように特定の財産を指定して与える遺贈であり、受遺者は原則として指定された財産を取得するにとどまります。
| 比較項目 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
|---|---|---|
| 対象 | 遺産の全部又は一定の割合 | 特定の財産 |
| 受遺者の地位 | 相続人と同一の権利義務(民法990条) | 指定された財産を取得(相続人と同一の地位ではない) |
| 債務の承継 | 割合に応じて承継し得る | 原則として承継しない |
| 放棄・承認の方式 | 相続人と同一の権利義務を有するため、相続の承認・放棄の規定に従う(家庭裁判所への申述等) | 遺贈の放棄に関する規定(民法986条等)に従う |
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するため(民法990条)、その承認・放棄については相続の承認・放棄に関する規定が適用され、家庭裁判所への申述によって相続放棄をする場合と同様の枠組みで処理されると一般に説明されます。これに対し、特定遺贈の放棄は、受遺者が遺言者の死亡後いつでもすることができる遺贈の放棄の規定(民法986条1項)等に従います。両者は「遺贈」という点では共通しますが、受遺者が立つ地位や手続が異なる点に注意が必要です。
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▶ 法定相続分を自動計算する遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができます(民法964条)。割合で与える包括遺贈も、特定の財産を指定して与える特定遺贈もすることができます。
包括遺贈は遺産の全部又は一定の割合を与える遺贈で、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)。特定遺贈は特定の財産を指定して与える遺贈で、受遺者は原則としてその財産を取得するにとどまります。
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するため(民法990条)、与えられた割合に応じてプラスの財産だけでなく債務も承継し得るものとされています。具体的な範囲は事案により判断されます。