遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために選任・指定される者です。民法1012条1項は、遺言執行者が「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定めています。遺言執行者の職務は遺言内容の実現にあり、必ずしも相続人の利益のために行うものではない点が、2019年7月1日に施行された相続法改正で明確化されました。ここでは権限の枠組みを中立に整理します。
遺言執行者は、遺言者が遺言で指定する方法のほか、遺言で指定された者がいない場合などに、利害関係人の請求により家庭裁判所が選任する方法があります(民法1006条・1010条)。遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないとされています(民法1013条1項)。これは、遺言執行者による遺言内容の実現を確保するための規定です。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(1012条1項)。改正により、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができることも明記されました(1012条2項)。遺言執行者は、その任務を行うにあたり善良な管理者の注意をもって委任に関する規定に従う立場とされ、相続人に対し執行状況の報告等の義務を負うものと整理されています。
| 条文 | 内容(概要) |
|---|---|
| 1012条1項 | 遺言の内容を実現するため必要な一切の行為をする権利義務 |
| 1012条2項 | 遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができる |
| 1013条 | 遺言執行者がある場合、相続人は執行を妨げる行為ができない |
| 1014条2項 | 特定財産承継遺言があるとき、対抗要件具備に必要な行為ができる |
| 1015条 | 権限内でした行為は相続人に対して直接に効力を生ずる |
「相続させる」旨の遺言などにより特定の財産を特定の相続人に承継させる遺言(特定財産承継遺言)があった場合、改正後の民法1014条2項は、遺言執行者が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができると定めています。これにより、遺言執行者が相続登記の申請など、第三者に権利を主張するための手続を行えることが明文化されました。改正前は遺言執行者の権限の範囲をめぐる解釈に争いがありましたが、この点が整理されています。
改正後の民法1015条は、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずると定めています。改正前は「相続人の代理人とみなす」と規定されていましたが、遺言執行者の職務は遺言内容の実現にあり、遺言者の意思と相続人の利益が対立しうることを踏まえ、規定が改められました。これにより、遺言執行者の行為の効果が相続人に帰属することがより明確になっています。
遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は家庭裁判所に遺言執行者の解任を請求することができます(民法1019条1項)。また、遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(同条2項)。これらは遺言執行が適切に行われることを担保するための仕組みです。
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▶ 法定相続分を自動計算する遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。2019年7月施行の相続法改正により、遺言執行者がある場合には遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができることなども明確化されました。
改正後の民法1015条は、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対して直接にその効力を生ずると定めています。改正前は「相続人の代理人とみなす」と規定されていました。