遺贈の放棄とは?効果と撤回不可

遺贈とは、遺言によって財産を他人に無償で与える処分をいいます。財産を受ける受遺者は、必ずしも遺贈を受け入れなければならないわけではなく、これを放棄することができます。ここでは、遺贈の放棄に関する民法の条文の内容を、事実のとおり中立に整理します(本ページは特定遺贈を念頭に置いた整理です)。

放棄の時期:遺言者の死亡後いつでも(民法986条1項)

民法第986条1項は、「受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができる」と定めています。遺贈の効力は遺言者の死亡によって生じるため(民法985条1項)、受遺者は遺言者が亡くなった後であれば、原則として期間の制限なくいつでも遺贈の放棄をすることができるものとされています。

放棄の効力:死亡の時にさかのぼる(民法986条2項)

民法第986条2項は、「遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる」と定めています。放棄がされると、その遺贈は遺言者の死亡の時点に遡って効力を生じなかったものとして扱われます。すなわち、受遺者は最初からその遺贈による財産を取得しなかったことになります。

条文定めている内容(条文の趣旨)
民法986条1項受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができる
民法986条2項遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼって効力を生ずる
民法987条遺贈義務者その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて承認・放棄の催告ができる
民法989条1項遺贈の承認・放棄は、撤回することができない

催告権:利害関係人からの催促(民法987条)

民法第986条1項により受遺者はいつでも放棄ができますが、放棄も承認もされないまま長く続くと、遺贈義務者(遺贈の履行義務を負う相続人など)や他の利害関係人は不安定な立場に置かれます。そこで民法第987条は、「遺贈義務者その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる」と定め、続けて、受遺者がその期間内に意思表示をしないときは、遺贈を承認したものとみなすとしています。これにより、受遺者の態度が確定しない状態を解消する仕組みが設けられています。

撤回の不可:一度した放棄は撤回できない(民法989条)

民法第989条1項は、「遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない」と定めています。受遺者がいったん遺贈を放棄(または承認)した場合、後からその意思表示自体を翻して撤回することはできません。ただし同条2項は、民法919条2項・3項の規定(相続の承認・放棄に関する取消し等の規定)を遺贈の承認・放棄について準用しており、意思表示に瑕疵がある場合の取消し等の取扱いは、これらの準用される規定により判断されます。撤回(自由な翻意)と取消し(瑕疵を理由とする効力否定)は別の概念である点に注意が必要です。

条文の整理:遺贈の「放棄」は986条で死亡後いつでも可能・死亡時に遡及して効力が生じ、987条で利害関係人が催告でき(無回答は承認とみなす)、989条で承認・放棄そのものの撤回はできない、という形で各条文がつながっています。具体的な事案における該当性は個別事情により判断されます。

相続放棄との違い

「遺贈の放棄」(民法986条)は、遺言で与えられた特定の財産(遺贈)を受け取らない意思表示であり、相続人としての地位そのものを失うものではありません。これに対し「相続放棄」(民法938条・939条)は、家庭裁判所への申述によって相続人の地位を確定的に拒否する制度で、放棄した人は初めから相続人とならなかったものとみなされます。手続(遺贈の放棄は方式の定めがなく、相続放棄は家裁への申述が必要)や効果の範囲が異なります。

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よくある質問

遺贈の放棄はいつできますか?

受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができます(民法986条1項)。

遺贈を放棄するとその効力はいつから生じますか?

遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生じます(民法986条2項)。受遺者は最初からその遺贈による財産を取得しなかったものとして扱われます。

放棄も承認もしないままだとどうなりますか?

遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定めて承認・放棄を催告でき、受遺者がその期間内に意思表示をしないときは遺贈を承認したものとみなされます(民法987条)。

一度した遺贈の放棄は撤回できますか?

遺贈の承認・放棄は撤回することができません(民法989条1項)。ただし意思表示に瑕疵がある場合の取消し等は、準用される規定(同条2項・民法919条2項3項)により判断されます。

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