遺贈義務者の引渡義務とは?

遺贈がされると、受遺者に対して遺贈を履行する義務を負う者(遺贈義務者)は、遺贈の目的である物や権利を受遺者に引き渡したり移転したりする必要があります。このとき、どのような状態で引き渡せばよいのかを定めているのが民法第998条です。ここでは、遺贈義務者の引渡義務に関する民法の条文の内容を、事実のとおり中立に整理します。

遺贈義務者とは

遺贈義務者とは、遺贈の履行をする義務を負う者をいいます。一般に、相続人や包括受遺者がこれにあたり、遺言執行者があるときは、遺言の執行に必要な行為をする権利義務を有する遺言執行者(民法1012条)が遺贈の履行をする立場に立ちます。遺贈義務者は、遺言の内容に従って、特定遺贈の受遺者に対し目的物の引渡し・移転を行う義務を負います。

原則:引渡し・移転の時の状態(民法998条本文)

民法第998条本文は、「遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う」と定めています。

すなわち、遺贈義務者が引き渡し・移転すべき目的物の「状態」の基準時は、原則として相続開始の時です。ただし、その後に当該物又は権利が遺贈の目的として特定した場合には、その特定した時の状態が基準となります。遺贈義務者は、その基準時の状態のままで目的物を引き渡し、又は権利を移転すれば足りるのが原則です。

区分引き渡す状態の基準時(民法998条本文)
原則相続開始の時の状態
その後に遺贈の目的として特定した場合その特定した時の状態
遺言者が別段の意思を表示したときその意思に従う(同ただし書)

特定物・不特定物と「特定」

遺贈の目的物には、特定の物そのものを指定する場合(特定物の遺贈)と、種類・数量等で示される物を与える場合(不特定物の遺贈)とがあります。不特定物の遺贈などでは、どの物を給付するかが定まる「特定」がされることがあり、条文はその「特定した時」を状態の基準時として位置づけています。条文上は「相続開始の時(…遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態」と整理されており、いずれの場合も、その基準時における物又は権利の状態で引き渡し・移転すれば足りるのが原則です。

遺言者の別段の意思(民法998条ただし書)

民法第998条ただし書は、「ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う」と定めています。遺言者が、引き渡すべき状態や時点について本文と異なる定めを遺言で表示していた場合には、本文の原則ではなくその遺言者の意思に従うことになります。本条本文は当事者の意思を補充する性質の規定であり、遺言者が別段の意思を示していればそれが優先されます。

条文の整理:遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、原則として相続開始の時の状態(その後に遺贈の目的として特定した場合はその特定した時の状態)で引き渡し・移転すれば足りる(998条本文)、ただし遺言者が遺言で別段の意思を表示していればその意思に従う(同ただし書)、という形で構成されています。具体的な事案における該当性は個別事情により判断されます。

関連する規定との関係

遺贈の効力は原則として遺言者の死亡によって生じ(民法985条1項)、受遺者は遺贈を放棄することもできます(民法986条)。遺贈の目的物の状態をめぐっては、本条(998条)が引渡し・移転の状態の基準を定めるほか、遺贈の目的物に第三者の権利が付着している場合の取扱いなど、関連する規定が民法に置かれています。本ページは民法998条が定める引渡義務の基準を中心に、条文の内容を中立に整理したものです。

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よくある質問

遺贈義務者とは誰のことですか?

遺贈の履行をする義務を負う者をいい、一般に相続人や包括受遺者、遺言執行者があるときはその者がこれにあたります。

遺贈義務者はどのような状態で目的物を引き渡せばよいですか?

遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時(その後に遺贈の目的として特定した場合はその特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負います(民法998条本文)。

遺言者が別段の意思を表示していたときはどうなりますか?

遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います(民法998条ただし書)。本文は当事者の意思を補充する規定であり、遺言者の別段の意思が優先されます。

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