遺留分権利者が遺留分侵害額を金銭で請求するとき(民法1046条)、その請求を受けて実際に負担するのは、遺贈を受けた受遺者や、贈与を受けた受贈者です。受遺者・受贈者が複数いる場合に「誰が・どの順序で・どれだけ」負担するのかを定めるのが民法1047条です。ここでは同条の負担のルールを、条文の事実に沿って中立に整理します。
民法1047条1項1号は、受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担すると定めています。遺贈(遺言による無償の財産処分)で財産を受けた人がまず負担し、それでも遺留分侵害額が残る場合に、生前の贈与を受けた受贈者が負担するという順序です。受遺者の負担で侵害額が満たされれば、受贈者は負担しません。
同じ順位の中に複数の人がいる場合の分け方が問題になります。民法1047条1項2号は、受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者・受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担すると定めています。つまり、受けた遺贈や贈与の価額が大きい人ほど多く負担します。
ただし、同号にはただし書きがあり、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います。遺言で負担割合が指定されていれば、価額の割合ではなくその指定が優先されます。
受贈者が複数いて、贈与が異なる時期にされた場合は、民法1047条1項3号により、後の贈与に係る受贈者から順次、前の贈与に係る受贈者が負担するとされています。新しい(後の)贈与を受けた受贈者が先に負担し、古い(前の)贈与を受けた受贈者は、後の贈与で侵害額が満たされなかった場合にはじめて負担します。古い贈与ほど受贈者の生活基盤に組み込まれていることなどを踏まえ、新しい贈与から取り戻す建て付けです。
| 場面 | 負担の順序・割合 | 根拠 |
|---|---|---|
| 受遺者と受贈者がいる | 受遺者が先 → 受贈者 | 1047条1項1号 |
| 受遺者が複数/受贈者が複数で同時の贈与 | 目的の価額の割合で按分 | 1047条1項2号 |
| 同上で遺言に別段の意思の表示がある | 遺言の指定に従う | 1047条1項2号ただし書 |
| 受贈者が複数で贈与の時期が異なる | 後の贈与から順次前へ | 1047条1項3号 |
負担すべき受遺者または受贈者が無資力で、現実に支払を受けられない場合があります。民法1047条4項は、受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰すると定めています。すなわち、無資力で回収できなかった分を、次順位の受贈者や他の受遺者・受贈者が肩代わり(連帯して負担)するのではなく、請求する側である遺留分権利者がそのリスクを負うという整理です。
なお、受遺者・受贈者が遺留分権利者の承継する債務を弁済するなどして消滅させた場合の調整(民法1047条3項)や、裁判所が請求により支払につき相当の期限を許与できること(同条5項)も同条に定められています。具体的な当てはめは事案により異なります。
誰が相続人になり、各人の法定相続分がいくらかは、遺留分や負担の前提になります。家族構成を入力すると、その場で自動計算・可視化できます(登録不要・無料)。
▶ 法定相続分を自動計算する受遺者と受贈者の両方がいるときは、受遺者が先に負担します(民法1047条1項1号)。遺贈で財産を受けた人が先に負担し、それでも遺留分侵害額が残る場合に、贈与を受けた受贈者が負担します。
受遺者が複数あるとき、または受贈者が複数あって贈与が同時にされたときは、受遺者・受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担します(民法1047条1項2号)。ただし、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従います。
受贈者が複数あって贈与が異なる時期にされたときは、後の贈与に係る受贈者から順次、前の贈与に係る受贈者が負担します(民法1047条1項3号)。新しい贈与の受贈者が先に負担します。
受遺者または受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰します(民法1047条4項)。本来負担すべき人が支払えない分を他の人が肩代わりするのではなく、請求する側が負うことになります。