遺留分侵害額は誰が負担する?負担の順序(民法1047条)

▶ あなたの家族構成で法定相続分を自動計算(無料・登録不要)

遺留分権利者が遺留分侵害額を金銭で請求するとき(民法1046条)、その請求を受けて実際に負担するのは、遺贈を受けた受遺者や、贈与を受けた受贈者です。受遺者・受贈者が複数いる場合に「誰が・どの順序で・どれだけ」負担するのかを定めるのが民法1047条です。ここでは同条の負担のルールを、条文の事実に沿って中立に整理します。

まず受遺者、次に受贈者(民法1047条1項1号)

民法1047条1項1号は、受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担すると定めています。遺贈(遺言による無償の財産処分)で財産を受けた人がまず負担し、それでも遺留分侵害額が残る場合に、生前の贈与を受けた受贈者が負担するという順序です。受遺者の負担で侵害額が満たされれば、受贈者は負担しません。

複数の受遺者・同時の贈与は価額の割合で按分(民法1047条1項2号)

同じ順位の中に複数の人がいる場合の分け方が問題になります。民法1047条1項2号は、受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者・受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担すると定めています。つまり、受けた遺贈や贈与の価額が大きい人ほど多く負担します。
ただし、同号にはただし書きがあり、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います。遺言で負担割合が指定されていれば、価額の割合ではなくその指定が優先されます。

贈与の時期が違うときは後の贈与から先に(民法1047条1項3号)

受贈者が複数いて、贈与が異なる時期にされた場合は、民法1047条1項3号により、後の贈与に係る受贈者から順次、前の贈与に係る受贈者が負担するとされています。新しい(後の)贈与を受けた受贈者が先に負担し、古い(前の)贈与を受けた受贈者は、後の贈与で侵害額が満たされなかった場合にはじめて負担します。古い贈与ほど受贈者の生活基盤に組み込まれていることなどを踏まえ、新しい贈与から取り戻す建て付けです。

負担の順序の早見表

場面負担の順序・割合根拠
受遺者と受贈者がいる受遺者が先 → 受贈者1047条1項1号
受遺者が複数/受贈者が複数で同時の贈与目的の価額の割合で按分1047条1項2号
同上で遺言に別段の意思の表示がある遺言の指定に従う1047条1項2号ただし書
受贈者が複数で贈与の時期が異なる後の贈与から順次前へ1047条1項3号

受遺者・受贈者が支払えないとき(無資力のリスク)

負担すべき受遺者または受贈者が無資力で、現実に支払を受けられない場合があります。民法1047条4項は、受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰すると定めています。すなわち、無資力で回収できなかった分を、次順位の受贈者や他の受遺者・受贈者が肩代わり(連帯して負担)するのではなく、請求する側である遺留分権利者がそのリスクを負うという整理です。

例)相続人は子A・子Bの2人。被相続人は、生前に古くXへ、その後新しくYへ贈与し、いずれも遺留分の基礎財産に算入される。遺言による遺贈はない。Bの遺留分侵害額を負担するのは受贈者X・Yで、贈与の時期が異なるため、まず後の贈与の受贈者Yが負担し、Yで足りない分を前の贈与の受贈者Xが負担する(民法1047条1項3号)。仮に先に負担すべきYが無資力で支払えなくても、その損失はBの負担となり、Xに上乗せして請求できるわけではない(同条4項)。

なお、受遺者・受贈者が遺留分権利者の承継する債務を弁済するなどして消滅させた場合の調整(民法1047条3項)や、裁判所が請求により支払につき相当の期限を許与できること(同条5項)も同条に定められています。具体的な当てはめは事案により異なります。

家族構成を入れて法定相続分・遺留分の前提を確認する

誰が相続人になり、各人の法定相続分がいくらかは、遺留分や負担の前提になります。家族構成を入力すると、その場で自動計算・可視化できます(登録不要・無料)。

▶ 法定相続分を自動計算する

よくある質問

遺留分侵害額は受遺者と受贈者のどちらが先に負担しますか?

受遺者と受贈者の両方がいるときは、受遺者が先に負担します(民法1047条1項1号)。遺贈で財産を受けた人が先に負担し、それでも遺留分侵害額が残る場合に、贈与を受けた受贈者が負担します。

受遺者や受贈者が複数いるときはどう分けますか?

受遺者が複数あるとき、または受贈者が複数あって贈与が同時にされたときは、受遺者・受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担します(民法1047条1項2号)。ただし、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従います。

贈与の時期が違う受贈者が複数いるときはどうなりますか?

受贈者が複数あって贈与が異なる時期にされたときは、後の贈与に係る受贈者から順次、前の贈与に係る受贈者が負担します(民法1047条1項3号)。新しい贈与の受贈者が先に負担します。

受遺者や受贈者が無資力で支払えない場合はどうなりますか?

受遺者または受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰します(民法1047条4項)。本来負担すべき人が支払えない分を他の人が肩代わりするのではなく、請求する側が負うことになります。

他の相続パターン