相続人への生前贈与と10年の期間(民法1044条3項)

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遺留分を算定するための財産(基礎財産)には、過去の生前贈与も一定の範囲で加算されます。相続人への贈与については、相続人以外への贈与とは異なる「10年」の期間が定められています。ここでは、その根拠となる民法1044条3項を中心に、条文の事実に沿って中立に整理します。

原則は1年(民法1044条1項)

民法1044条1項は、贈与は相続開始前の1年間にしたものに限り、前条(1043条)の規定により遺留分の基礎財産にその価額を算入する、と定めています。ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものも算入されます(同項後段)。これは主に相続人以外の者への贈与に妥当する原則です。

相続人への贈与は10年(民法1044条3項)

これに対し、民法1044条3項は、相続人に対する贈与についての1項の適用について、次のように読み替えると定めています。

1項の文言相続人への贈与での読み替え
「一年」→「十年」
「価額」→「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」

つまり、相続人への贈与については、相続開始前の10年間にした贈与であって、かつ婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与(特別受益にあたる贈与)に限り、基礎財産に算入されます。特別受益の一般的な内容は「特別受益と持戻し」で整理しています。

1年と10年の違い(まとめ)

贈与の相手算入される期間対象となる贈与根拠
相続人以外の者原則1年贈与一般(損害を知ってした場合は1年より前も)民法1044条1項
相続人原則10年特別受益にあたる贈与に限る民法1044条3項

2019年7月1日施行の改正

相続人への贈与を原則10年に限る民法1044条3項は、2018年(平成30年)の相続法改正で設けられ、2019年(令和元年)7月1日に施行されました。施行日以後に開始した相続について適用されます。改正前は、相続人への特別受益にあたる贈与は期間の制限なく遡って算入されうると解されていましたが、改正により法律関係の安定をはかる趣旨で原則10年の枠が設けられました。

計算例

例)相続人は子A・子Bの2人。被相続人は、相続開始の8年前に子Aへ生計の資本として1,000万円を贈与し、相続開始の15年前に子Bへ生計の資本として500万円を贈与していた(債務なし、相続開始時の財産は3,000万円)。
・子Aへの1,000万円は、相続開始前10年以内かつ特別受益なので算入される(民法1044条3項)。
・子Bへの500万円は、相続開始前10年より前なので、原則として算入されない
・遺留分の基礎財産=3,000万円 + 1,000万円 =4,000万円(民法1043条1項・1044条3項)。

このように、いつ・誰に・何の目的で贈与されたかによって、基礎財産に入るかどうかが変わります。基礎財産の計算全体は「遺留分の算定の基礎となる財産」を参照してください。

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よくある質問

相続人への生前贈与は遺留分の計算で何年前までさかのぼりますか?

相続人への贈与については、遺留分を算定するための財産の価額に算入されるのは、原則として相続開始前の10年間にした特別受益にあたる贈与です(民法1044条3項)。相続人以外への贈与が原則1年であるのと異なります。

10年のルールはいつからの相続に適用されますか?

民法1044条3項は2018年(平成30年)の相続法改正で設けられ、2019年(令和元年)7月1日に施行されました。施行日以後に開始した相続について適用されます。

どんな贈与でも10年分入りますか?

相続人への贈与のうち算入されるのは、婚姻もしくは養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与(特別受益にあたる贈与)に限られます(民法1044条3項)。

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