遺留分侵害額請求の計算方法(民法1046条)

遺言などで取り分が遺留分より少なくなったとき、遺留分権利者は不足分を金銭で請求できます。ここでは、その根拠と計算の枠組みを定める民法1046条を中心に、計算式と計算例を条文の事実に沿って中立に整理します。

金銭債権になった(民法1046条1項)

2018年(平成30年)の相続法改正により、従来の遺留分減殺請求遺留分侵害額請求へと見直され、2019年(令和元年)7月1日に施行されました。民法1046条1項は、遺留分権利者およびその承継人が、受遺者・受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できると定めています。改正前のように、贈与・遺贈の目的物が当然に権利者との共有になる仕組みではなく、金銭債権として精算する仕組みに改められた点が大きな違いです。

計算式(民法1046条2項)

民法1046条2項は、遺留分侵害額の算定方法を次のように定めています。すなわち、1042条の規定による遺留分(の額)を出発点として、次の調整を行います。

区分処理内容
① 受けた遺贈・特別受益贈与の額控除(−)遺留分権利者が受けた遺贈や、903条1項の特別受益にあたる贈与の額
② 取得すべき具体的相続分の額控除(−)遺産分割の対象がある場合、権利者が取得すべき具体的相続分に相当する遺産の価額
③ 承継する債務の額加算(+)被相続人の債務のうち、899条により遺留分権利者が承継する債務の額

式で書くと、遺留分侵害額 = 遺留分額 −(受けた遺贈・特別受益)−(具体的相続分)+(承継する債務)となります。出発点となる「遺留分額」は、遺留分を算定するための財産の価額(民法1043条)に、総体的遺留分の割合(原則1/2、直系尊属のみは1/3。民法1042条1項)と自分の法定相続分(同2項)を掛けて求めます。

計算例

例)遺産は5,000万円、相続人は子A・子Bの2人、債務なし、生前贈与なし。遺言で「全財産をAに相続させる」とされ、Bの取り分はゼロ。
・遺留分を算定するための財産の価額=5,000万円
・総体的遺留分=1/2(直系尊属のみではないため。民法1042条1項2号)
・Bの法定相続分=1/2(子2人で均等)
・Bの遺留分額=5,000万円 × 1/2 × 1/2 =1,250万円
ここから、Bが受けた遺贈・特別受益=0、取得する具体的相続分=0、承継する債務=0なので、
・Bの遺留分侵害額=1,250万円 − 0 − 0 + 0 =1,250万円
Bは、全財産を取得したAに対し、1,250万円の支払を金銭で請求できる、という計算になります(民法1046条)。
例)上記でBがすでに生前に500万円の特別受益にあたる贈与を受けていた場合。
・Bの遺留分額=1,250万円(算定方法は同じ)
・受けた特別受益=500万円を控除
・Bの遺留分侵害額=1,250万円 − 500万円 =750万円
すでに受け取っている分は遺留分の中に含めて差し引くため、請求できる額はその分小さくなります。

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よくある質問

遺留分はお金で請求するのですか?

はい。2019年7月1日施行以後に開始した相続では、遺留分権利者は受遺者・受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求します(民法1046条1項)。改正前の遺留分減殺請求のように現物が共有になる仕組みではありません。

遺留分侵害額はどう計算しますか?

民法1046条2項により、1042条の遺留分(額)から、受けた遺贈・特別受益にあたる贈与の額と、取得すべき具体的相続分に相当する額を控除し、承継する債務の額を加算して算定します。

自分の遺留分の額はどう求めますか?

遺留分を算定するための財産の価額(民法1043条)に、総体的遺留分の割合(原則1/2、直系尊属のみは1/3。民法1042条1項)と自分の法定相続分(同2項)を掛けて求めます。

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